風のたより73号
ネパールの女性起業家の誕生!■ シターラさんとの出会い
さてみなさん、おいしいネパールのカレー誕生のお話を「ネパリ・バザーロだより」よりご紹介しましょう。日々こつこつ、そして思いをつなぐ、どこの国でも通じますね。
シターラさんとの出会いはWEAN(女性起業家協会)代表を務め、ネパールウーマンクラフトの代表でもある長年の友人シャンティ・チャダさんの計らいでした。■ いま一つピンとこないカレー
ネパールでご馳走になるカレーはどのご家庭でいただいてもとてもおいしく、新鮮なスパイスが効きながらもマイルドなそのカレーを手軽に作れたらと、マサラ(ネパール語でスパイスのこと)の輸入をずっと考えていました。
ところが、ありそうでないのがピッタリのマサラセットとそれを供給してくれる信頼できる生産者です。 困った私はある時シャンティさんに「良いマサラセットを作ってくれる生産者はいない?品質に厳しい日本に安心して出せるマサラセットを作ってくれる人。」と聞きました。
WEANで育てた女性起業家達のマーケットとネパリ・バザーロのことを常に心配しているシャンティさんは、「任せて!」と胸を叩きました。頼もしいシャンティさん、いつも期待を裏切りません。
帰国までの数日間でサンプルを作ってくれました。その時は誰が作ったのか、どういう人なのか詳しいことは分らず、WEAN協同組合のメンバーとだけしか教えてくれませんでした。その理由は後で分りましたが。
帰国後、早速試作してみました。おいしいけれど、今1つピンときません。ネパールの野菜と日本の野菜は少し柔らかさや水気が違うからでしょうか?でもどうしたら「おいしい!」と思わず叫びたくなるような味になるのでしょう。生産者にこの感想を真っ直ぐぶつけるよりほかありません。■ 「これなら!」のサンプルが届く!
タイミング良く、アローという自然素材で布を織る生産者を訪ねるため、エベレストの麓の村へ行く完二さん(ネパリバザーロのスタッフ)に、この役目を託しました。彼が、その紹介された生産者「シターラさん」のご家庭を訪ね、私たちの感想を伝え、味に深みをだしてほしいとお願いしました。
シターラさんはマサラの調合をいろいろ変えて調理してくれました。試食した彼が「これなら」というサンプルができ、持帰りました。それは本当においしいカレーでした。
これです、これなら皆さんに喜んでいただけると確信しました。張切ってレシピを作ったり、パッケージデザインをしたりして準備をし、2000年3月に発売しました。おかげさまで大好評。ネパリの大ヒット商品となりました。■ 新規事業を勝ち取ったシターラさん
ところで何故最初にサンプルを渡した時、シャンティさんが生産者についての詳しい説明をしなかったのかということです。その後、シターラさんからもシャンティさんからもその時の事情はよく聞かされました。■ シターラさんの武勇伝
ふたりにとって、特に温厚なシターラさんにとっては頑張って仕事を掴み取った武勇伝があったようです。
WEANの代表であるシャンティさんはこれまで数多くの女性起業家を育ててきました。その中でもシターラさんは成功してほしいと心から願わずにはいられない女性でした。シターラさんはメンバーが所属するWEAN協同組合の理事として他の理事が嫌がる面倒な仕事、目立たない地味な仕事をニコニコと喜んで引き受け、いつも縁の下の力持ち。人を押しのけることなどできないお人好しでおっとりした性格で彼女の事業は赤字続き。何をやってもうまく行きません。彼女をじっと見ていたシャンティさんはいつかチャンスを掴んで成功して欲しいと願っていました。ネパリからマサラセットを作る生産者を探していると聞き、直ぐにシターラさんのことが頭に浮かびました。でも代表のシャンティさんの立場では彼女だけに声を掛けることは許されません。■ WEANのルール
このような場合、WEANのルールでは二者以上に平等にチャンスを割り当てねばなりません。■ 「だれよりも信頼を得られる良い仕事をする自信がある」とシターラさんは強く思った
私が帰国する前日の午後1時をタイムリミットとしてシターラさんともう一人の女性にサンプル製作を指示しました。期日に間に合わせてきちんとサンプルを作ったのはシターラさんでした。しかしその後の理事会では揉めました。たとえサンプルは間に合わなかったとしてもできるだけチャンスは広げ、両者で仕事を請け負うべきだという意見もありました。
珍しくシターラさんは毅然として意見を述べました。「外国に輸出するのは大変な仕事です。きちんと約束を守れない人にそういう重要な仕事はできません」。
居並ぶ人はさぞ驚いたでしょう。普段控えめでニコニコしている柔和な人がはっきりと物事を言ったのですから。良い仕事を一人占めしたという周囲のやっかみもあったようですが、シターラさんはそれにめげず「この仕事は私が一番適している。だれよりも信頼を得られる良い仕事をする自信がある」と強く思ったそうです。■ シターラさんを変えたトレーニング
そして自宅の庭に作業所を建て、仕事を必要としている貧しい家庭の女性たちを募集し、指導して、スパイシー・ホーム・スパイシーズという事業を立ち上げました。5人の若い女性が頭巾を被り、エプロンとマスクをしてテキパキと作業をしています。
ネパリ・バザーロに輸出するだけでなく、ネパールの国内市場に向けても販売するようになりました。
カトマンズなどの都市部では女性が出産する子どもの数も少なくなり、家族数が昔より減っています。
ネパリ・バザーロの仕様からヒントを得て10人前後の世帯用にマサラセットを作って発売したところ好評で、新しいアイディアで市場に参入する女性起業家として雑誌にも紹介されました。
シターラさんは結婚して15年間は専業主婦として暮らしてきました。娘3人、息子1人が学校に行き手が掛からなくなった頃、時々体調が悪いと訴え、病院に通うようになりました。夫のアチュトさんはそれを家事、育児が減り充実感が得られなくなったためと見抜きました。ある日、アチュトさんはINGO(国際NGO)が企画するスモールビジネス・トレーニングの受講申込書を持帰りました。保守的な家庭に育ったシターラさんは女性が仕事をするというイメージを持たず尻込みしましたが、アチュトさんや子どもたちの熱心なすすめにしぶしぶ出掛けて行きました。■ 事業家としての自信も湧いて
時間つぶしと思って受けた講習でしたが、初日から大きなカルチャーショックを受けたのでした。講師から最初に「Who am I?」と書いた紙を渡され、自分を客観的に見る、見つめ直すという体験をし、新鮮な血が頭一杯に駆巡ったような気がしました。1ヵ月のトレーニングが終了した時「生まれ変わった」気がしたそうです。
初めての納品の日のことです。帰国後すぐに開かれる、新カタログ発表展示会のために、注文した製品の一部を手で持ち帰らなければならないと言うと、「私が届ける」、と宿泊先まで届けにきてくれました。朝食を食べていたレストランに頬を紅潮させて意気揚々と入ってきたシターラさん。「初めてよ、輸出なんてするの!自分は事業をしているんだという実感が湧いて、うれしくて、うれしくて!」と興奮していました。■ シャンティさんから聞いたエピソード
無邪気だけどしっかりしている「明るいおふくろ」のシターラさんと、健康に良くておいしいカレーを作り、いつまでもネパールと日本との味のかけはしづくりをして行きたいと強く強く思います。
最初の注文を受け製品づくりをしていたシターラさんに、シャンティさんはある日、夜中に電話で叩き起されました。
こんな時間に何事かと思ったシャンティさんの耳にシターラさんの元気な声が響きました。
「私、今何していると思う? ネパリ・バザーロからの注文のマサラセット作っているの。まだ最初で慣れないから家族皆に手伝ってもらっているの。今みんなで作っているのよ。楽しいわ!」
シャンテイさんは心からホッとしたそうです。
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みなさんも、夢をもって、思いをつなげ、世界の人とも手をつなぎお互いに生き生き生活をしましょう!
カレーの感想などたよりをください。お待ちしています。