風のたより105号
私もフェア・トレードに関わるまでは、アクセサリーなど作る仕事に子供達が携わっているということは知りませんでした。アクセサリーだけではなく、手先仕事には子どもの手は使いやすいのでしょうか・・・仕事としては、サッカーボール・絨毯・おもちゃ・キャンデー包みなどの話を聞きます。■ 世界の児童労働者は7300万人(2001年ILO調べ)
2001年にウィルあいちにインドの「タラ・プロジェクトのムーン・シャルマ氏(女性)」を招いてお話を伺いました。5月の国際フェア・トレード月間の企画の一つで、フェア・トレード・ファッションショーと共にGAIAの会で企画しました。■ 児童就労の悪、教育の大切さを説く
その時見たスライドは、バングルなど作っている仕事場での風景でしたが、カメラに振り向いた彼らの表情は、子どもらしさはなく、疲れた労働者という顔でした。ムーンさんの解説によればその時間は夜の9時とか10時ということです。小学校の低学年のような子から働いています。1日8時間以上の労働はきついのは大人も同じ、まして子どもらは遊びも、学校もない、そして服従させられるような環境で働く子どもらの表情は見るのはつらいです。
タラ・プロジェクトはソーシャル・ワーカーと共に、まず児童労働が悪という認識を持たせ、教育の大切さを親に説きます。そして雇い主を説得し、それから子どもらが学校に行く時間が確保されるという、時間のかかる過程を経て、教育がやっとはじまります。また同時に大人達にも教育の大切さを実感させるために大人向けの教育もし始めましたということです。(詳しいことは、ピープルツリーの2000年春夏号に記事として掲載されています)■ 寄付ではなく、フェア・トレード、買い物から選択を!
ムーンさんは言いました「。寄付はどこからももらっていません。フェア・トレードでささえて下さい。消費者のみなさんが買い物をする時に、途上国の生産者のことを考えた商品選びを心がけて頂く協力が欠かせません。」 「風のたより」2001/7/23 No.51にもタラ・プロジェクトのことを掲載しています。
以下は2001年ムーンさんの来日したおりのスピーチ概要です。ピープルツリーのホームページより
1. タラ・プロジェクト発足の経緯
タラ・プロジェクトの始まりは、1970年代にカーストや貧困といったさまざまな問題のある社会を改革しようと、若い社会活動家、教師、シスターなどが集まったことがきっかけでした。「TARA」は、Trade Alternative Reform Action (貿易の新たな選択肢を探る改革運動)の頭文字をとったものです。まず、彼らが低カーストの人々のところに行って話を聞くことから活動を始めました。インドでは、法的にはカーストによる差別は禁止されているものの、社会通念上の差別は色濃く残っており、上層カーストの人が下層カーストのコミュニティを訪れること自体が大きな変革でした。2. 搾取と児童労働の現状
やがて、社会的に立場の弱い人々が自立するためには経済的な力をつけることが必要との認識が生まれ、豚や水牛を飼って収入を得るプロジェクトが始まりました。そして収入を得るようになった人たちの中から、ミシンを買って縫製をするグループが現れるなど、収入向上プロジェクトはどんどん広がっていきました。現在タラ・プロジェクトは、北インドのニュー・デリー近郊300km圏内で活動する手工芸職人500人を支援しています。
インドの手工芸品産業の生産者は、ほとんどが組織に属さずに個人や小規模で生産を行なっている「インフォーマル・セクター」の人々です。このセクターでは、法で定められている最低賃金や作業の安全環境などが全く守られていません。組織化されていない人々は交渉力も弱く、仲買人に買い叩かれても言い値で製品を売るしかありません。仲買人の腐敗ぶりも深刻で、賄賂を渡さなければ買い取ってくれない業者も多く、生産者の人々は賄賂を工面するために借金をして高金利の返済に苦しんでいます。3. 教育プロジェクト
また、児童労働もひんぱんに行われています。例えばバングル(インドの女性が身につける細いガラスのブレスレット)の生産で有名なフィロゾバッドでは、全部で34段階あるバングルの生産工程のうち、14工程くらいで子どもが使われています。大人の半分の賃金で、長時間文句も言わずに働く子どもたちは、雇用側からすると不可欠の労働力なのです。
学校へも行かず遊ぶこともできずに毎日10〜12時間働かされている子どもたちの現状を変えようと、タラ・プロジェクトでは子どもの親や雇用主、コミュニティーのリーダーに対し、教育の必要性について辛抱強く啓発活動を行なってきました。また、タラの収入向上プロジェクトで得られる利益によって非公式の学校プロジェクトを運営しており、現在14校で1,000人が学んでいます。児童労働を完全に無くすことは不可能ですが、それまで一日10時間働いていた子どもたちが、数時間だけでも授業を受けることで、読み書きを習得し、労働時間を減らすことができるようになりました。4. 生産プロジェクト
石細工のプロジェクトでは、タラ・プロジェクトで土地を買い、粉塵を吸い取って集める設備を備えた作業所を建てました。それまで、石細工職人は粉塵を吸って結核やゼンソクになってもそれが当たり前という風潮でしたが、この作業所によって初めて、安全な作業環境で仕事をすることが可能だと事例を示すことができました。一般の工場でも、タラの事例にならって作業環境を改善するところが出てきました。5. フェアトレードの支援の必要性
タラ・プロジェクトは、一切外部の資金援助を受けておらず、学校運営などはすべて生産プロジェクトからの収益でまかなわれています。この事業を続けていくためには、フェアトレード製品を買ってくれるみなさんの支援が必要なのです。グローバリゼーションや自由貿易は、大規模な多国籍企業にしか利益をもたらしていません。どんなに経済がグローバル化しても、インフォーマル・セクターの小規模手工芸職人はその恩恵にあずかれないのです。彼らにとって、唯一の望みはフェアトレードなのです。
“FTCoがデザインの支援や商品開発に力を入れてくれたおかげで、注文が着実に増え、生産者の人々の生活向上につながっています。今後も、息の長いパートナーシップを築いていきましょう”
ビーズ・アクセサリー、石細工製品を生産。不法児童就労反対活動を始め貧困撲滅のための様々な社会活動を実施。500生産者団体を支援。